性感染症の診断
- 3つに分類分けされる性感染症
検尿・視診・血液検査 - 男性の尿道炎を起こす性病の比較
- その他の性感染症の比較
3つに分類分けされる性感染症
3つの検査方法で分類
性感染症は大きく分けて
- 男の人で尿道炎を起こし、検尿で診断されるもの(淋病・クラミジア・トリコモナス)
- 外陰部に目に見える病変が認められるもの(梅毒・ヘルペス・尖圭コンジローマ)
- 血液検査の一つである抗体検査により診断されるもの(B型肝炎・エイズ・EBウィルス)
の3つに大きく分けられます。
検尿
出始めの尿を取ることが大切
1の尿道炎の診断は尿の検査(検尿)により行われます。ここで注意すべきなのは検査に一番大事なのは出始めの尿(初尿)を取るということです。しかも前の排尿から2時間ぐらいはあけてある方がよいのです。ですからもし尿道炎の症状があり、泌尿器科を受診される場合は、2時間以上尿をためてから行かれることが大切です。内科などの検尿や女性の膀胱炎の検査では中間尿といって出始めの尿を捨ててから尿を取る方が良いのですが、尿道炎を疑う場合、必ず出始めの尿を取る必要があるのです。
淋病やクラミジアの場合は尿採取のタイミングが異なります
淋病やクラミジアは前立腺や副睾丸炎の原因となります。この場合は下腹部や、陰茎の付け根のさらに奥の場所に違和感や痛みが出現します。この場合、前立腺のマッサージを肛門から行って、その後の尿を調べる場合があります。尿道炎だけでは発熱がないのですが、前立腺や副睾丸に炎症が起こると、発熱する場合があります。
より正確な診断を行うために
また以前は泌尿器科にかかると尿道をゴシゴシとこすられて死にそうに痛かったというような話があったかもしれませんが、現在では男子の場合、初尿を使って遺伝子的にかなりの確率で診断が可能ですので、あまり恐れずに受診して下さい。なお受診される時は、少し水分を控えていただいても結構ですので、できれば4時間程度は排尿を我慢してお越しください。尿道炎の診断には、出来るだけ我慢した後の出始めの尿を検査することにより、より正確な診断が可能となります。
視診
少しでも異常があれば早期に治療を
2の場合、一番大事なのは目で見ての診断(視診)です。ただれや何か盛り上がっている病変があれば専門医に診てもらうことが大切です。痛みを伴うものや伴わないものなどいろいろありますので、痛みがないからといって放置しておいて良いものではありません。このようなただれや盛り上がりは一時的にだけでて、消えてしまう場合があります。梅毒などがこのケースですが、後々全身の症状がでてくることになりますので、できるだけ早期にすなわち消えてしまわないうちに診断をうけることが大切です。
血液検査
内科や皮膚科からの診断で判明することが多い
3のB型肝炎などは、急にしんどくなったりして検査をしてみるとB型肝炎であったという場合が多く、その感染経路を検討してみると、性交からの感染いうことがわかる場合がほとんどです。現在のB型急性肝炎の5から30%は性行為からの感染ともいわれています。ですから泌尿器や婦人科から診断されるよりは、内科や皮膚科から診断される場合が多いようです。しかしこれもりっぱな性感染症の一つであり、注意が必要です。AIDSなどは初期は一時的に風邪のような症状がありますが、それは自然に治ってしまい、症状のないキャリアとよばれる状態で発症までの期間をすごすことになります。この期間における診断は血液検査しかなく、症状からの診断はできません。
男性の尿道炎を起こす性病の比較
潜伏期間 | 発症 | 排尿痛 | 分泌物の性状 | 分泌物の量 | 感染源となる期間 | 母子感染 | 続発症 | |
淋 病 | 2~10日 | 急激 | 強い | 膿性 | 中等量 | 菌陰性化まで持続 | 結膜炎 | 尿道狭窄、不妊症(前立腺炎、副睾丸炎) |
クラミジア | 1~3週 | 比較的緩徐 | 軽い | 漿液性ないし粘液性 | 漿液性ないし粘液性 | 菌陰性化まで持続 | 結膜炎、肺炎 | 不妊症(前立腺炎、副睾丸炎) |
共通の症状もありますが鑑別の必要性があります
男性の尿道炎を起こす代表的な病原体2つは淋菌とクラミジアです。両者は治療に使うお薬が異なる場合があり、鑑別が必要です。両者を比較してみると、症状は尿道の分泌物(膿など)、痛み、違和感と共通していますが、淋病の方が症状が強い場合が多いです。潜伏期間は淋病で2から10日、クラミジアで1から3週間で、淋菌の方が短くなります。どちらも二次的に前立腺炎や副睾丸炎をおこすことにより、不妊症になります。女性に感染すると、卵管炎や腹膜炎を起こします。男性よりも女性の方が症状が軽い場合が多いようです。
その他の性感染症の比較
初発症状 | 潜伏期間 | 感染源となる期間 | 母子感染 | 続発症 その他 | |
梅 毒 | 性器潰瘍、皮疹 | 3週 | 感染後2年以内強い | 胎児死亡、先天梅毒 | 中枢神経、心血管梅毒 |
ヘルペス | 性器びらん | 2〜10日 | 相手が無症状でもあり | 新生児全身感染 | 反復性疱疹、キャリア |
尖圭コンジローマ | 性器のいぼ | 1〜6ヶ月 | 相手が無症状でもあり | 咽頭いぼ | 子宮癌 |
B型肝炎 | 肝炎、黄疸 | 1ヶ月 | 血液、精液に常在 | キャリア | 肝癌 |
HIV(エイズ) | 発熱 | 2〜8週 | 血液、精液に常在 | 小児エイズ | カポジ肉腫、日和見感染 |
ケジラミ症 | 寄生部位の掻痒 | 1〜2ヶ月 | (体から離れると48時間以内しか生存しない) | ||
軟性下疳 | 潰瘍と痛み | 2日~1週間 |
それぞれ潜伏期間が異なります
その他の性病を潜伏期間などで比較してみましょう。梅毒やヘルペスや尖圭コンジローマは、いずれも陰部の皮膚や粘膜に肉眼的にわかる病変を形成しますが潜伏期間が異なります。いずれも母子感染もありえますし、怖い続発症もありえます。B型肝炎やエイズは血液検査でまず診断されることが多いです。症状がでてから気づく場合は、程度がひどい場合や進行している場合です。EBウィルス感染症は風邪のような症状から発症が気づかれる場合が多くあります。