肛門周囲膿瘍と痔瘻の治療 | 山添医院

京都市左京区の山添医院 肛門科

肛門周囲膿瘍と痔瘻の治療

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膿の排除

 肛門周囲膿瘍でも痔瘻でも膿が溜まっているときには、まず切って膿を出さなければなりません。幸運な場合は自然に破れて排膿し、治ってしまう場合もあります。ただしこれを期待して切るタイミングが遅くならないように注意しなければなりません。膿が溜まっていない場合(溜まっているのにわからない場合を除く)は、直ちに切らなければならないわけではありません。この場合は抗生物質や消炎鎮痛剤でまず保存的に治療することになります。一部の肛門周囲膿瘍は本人がほとんど気がつかないうちにやぶれて皮膚に膿の出口をつくって、痔瘻となってしまう場合もあります。この場合は本人は何となく下着が汚れるだけで、痛みもほとんどありません。

急性期を過ぎたら根治治療

 膿が溜まった急性期をすぎると、時期をみて根治手術が必要になります。原因のところで述べたように、一次口とよばれる肛門皮膚と直腸粘膜の境目に多く存在する原因となる穴をきちんと処理しない限りは、再発を繰り返す可能性が高いからです。しかし初回の場合で、一次口もはっきりしない場合などは、経過観察でようすみるばあいもあります。再発を繰り返す場合やその可能性が高い場合は、なるべく早い時期に手術をした方がよいでしょう。

手術をしても再発の可能性はあります

 痔瘻は手術をしても再発することがあります。この原因には痔瘻のもととなる肛門小窩が十分に除去されていない場合や、されていてもその隣付近のの肛門小窩から新たにできてくる場合もあります。複雑な形の痔瘻ほど再発率が高くなりますので、できれば複雑にならない早い時期に手術ができれば理想です。また手術方法により再発率は異なります。

 

肛門周囲膿瘍の手術療法

痔瘻になる可能性も

 肛門周囲膿瘍では基本的には局所麻酔をしてその部分を切開し、膿を出してやる必要があります。こうすると麻酔の注射をする時と切った直後の麻酔がきれたときには痛みはありますが、ずっと楽になり、熱も下がります。これで病気は治ったように感じますが、通常は急性の炎症がおさまったというだけで、やがてこれが管状になって細くなって、直腸肛門管と皮膚とに連絡した索状物が残り、これが一般的な痔瘻になります。

 痔瘻は運のいい場合には自然に原因となった肛門小窩がふさがってそのまま治まる場合もありますが、ほとんどは時々排膿を繰り返し、完全に治すには根治手術を行うしかありません。


痔瘻の手術療法

原因部分の処理

 痔瘻の一番確実な治療方法は手術をすることです。痔瘻でも単純なものから複雑なものまであり、それによって手術方法が違います。しかし究極の目的は、原因となっている一次口(原発口)をきちんと処理することです。

3つの手術法

 痔瘻の手術には、痔瘻の管を完全に皮膚の外に開放してしまう方法(開放術式)管だけをくり貫く方法(閉鎖術式)が行われます。また痔瘻の管に”ひも”を通し、このひもを少しずつ締めていき徐々に治す方法(いわゆるシートン法)もあります。

開放術式

 これらの3つの方法のうち、開放術式は最も確実に治り、シートン法よりも早く治る場合がほとんどですが、手術後の痛みが最もあるのが欠点です。また肛門括約筋も切ってしまう場合、括約筋がのちのちに締まりが悪くなり、便がもれてしまう可能性もあります。

閉鎖術式

閉鎖術式は痔瘻をトンネル状にくりぬいてほぼ全部摘出し、一次口の付近を縫って閉じてしまう方法です。この方法は侵襲も少なく(痛みも少ない)、うまくさえいけば治る期間も最も短くてこの意味では最も優れているのですが、創が化膿しやすく、その結果再発率が最も高いという欠点があり、このため再手術が必要な場合が多い点が欠点です。

シートン法

いわゆるシートン法は前に述べた2つの方法の中間的な方法です。手術後の痛みはほとんどなく、わりに確実には治るのですが、欠点としては完治するまでに日数がかかってしまうということです。しかしゆっくり治る方が、治った後の肛門が硬くならないというメリットもあり、スポーツや激しい運動などを含めて特に制限はなく、ほぼ今まで通りの生活を続けられますので悪い方法ではありません。

当院では手術日に帰宅可能です

 痔瘻の手術はその程度がよほどひどくなければ外来でも十分可能です。当院では基本的には浅くて短い後方の痔瘻に関しては開放術式、その他の痔瘻に関しては、痔瘻をくりぬいた後にシートン法を行うという方法で行っています。閉鎖術式もご希望があれば行っております。麻酔は局所麻酔か、より痛くない仙骨麻酔にて行っており、手術後にしばらく安静にしていただいた後にその日のうちに帰宅していただいております。

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