痔について | 山添医院

京都市左京区の山添医院 肛門科

痔について

痔とは何か

痔とは肛門およびその周囲の病気の総称したものです。従って肛門およびその周囲に何らかの症状があれば、痔である可能性が高いわけです。痔は人間が立って歩くようになったためにおこるようになった、すなわち肛門が心臓より低い位置になったためにおこりやすくなった病気で、症状が出ないものも含めると成人の半数以上にみられるといわれています。


痔の代表的な3種類

 痔は大きく分けると

  • 直腸肛門部の血管の一部がふくれあがる痔核(いぼ痔)
  • 固い便により肛門の上皮がさけてしまう裂肛(きれ痔)
  • 細菌が感染して膿(うみ)がたまってしまう肛門周囲膿瘍(はれ痔)とそれに引き続いておこる痔瘻(あな痔)

の3つになります。

 しかしこのほかにも

  • 肛門部の種々の皮膚疾患
  • 良性腫瘍
  • 直腸や肛門の癌
  • 肉腫

なども広い意味では痔ということになります。

放置しておくのは危険です

従って、自分は痔だけど恥ずかしいから放っておこうとか、痔だから良性で自分さえ我慢していればいいんだなどと決めつけるのは危険な場合もあります。


肛門部の解剖と痔の症状について

 おしりの解剖というとなにか難しそうだと思われるかもしれませんが、簡単に説明してみましょう。肛門とは当然大便が出てくるところですが、ここは大腸の終わりの部分である直腸の粘膜とおしりの皮膚との接点でもあります。肛門部に皮膚は肛門上皮とよばれる少し普通の皮膚とは異なる構造をもった皮膚となり、肛門上皮と直腸の粘膜との境目が、歯状線と呼ばれる部分です。

 神経の分布の関係でこの歯状線より内側すなわち直腸側では痛みがなく、外側すなわち皮膚側では痛みが起こります。歯状線より内側の血管がはれてできる内痔核や癌などは痛みがなく、歯状線の外側の血管がはれてできる外痔核や裂肛が痛むのはこのためです。

 また肛門を時計にみたたて、お腹側が12時(0時)、背中側が6時とすると、痔核の原因の一つと考えられる上直腸動脈が流れ込んでくるのは3時、7時、11時方向のため、内痔核ができるのはこの3方向が多くなっています。

痔の症状からみた3つの痔の鑑別

痔核

 痔核の主な症状は出血、はれ、外への脱出、痛みです。痔核の痛みは痔核の中に血栓ができたり(血栓性外痔核)、外への脱出のため腫れがひどくなったり、裂肛を合併したときなどにおこります。先に述べたように内痔核だけの場合、痛みはありません。しかし程度が進んでくると肛門外に脱出し、外痔核を伴うようになってくる場合が多く、この場合痛みが出てきます。

裂肛

 裂肛の主な症状は痛みと出血です。裂肛の痛みは特に排便時に急におこり、排便後も持続することが特徴的です。また出血は痛みと共にある場合が多く、時には便器が真っ赤になるぐらいに吹き出すこともあります。裂肛の場合あまり肛門の外がはれることはなく、小さなしこりや皮膚のたるみ程度のことが多いようです。

痔瘻・肛門周囲膿瘍

 肛門周囲膿瘍や痔瘻の主な症状は肛門の周囲の痛みです。また肛門の周りがはれたり、局所に熱を持ったり、全身的に熱がでることもあります。3つの痔の中で熱が出るのは肛門周囲膿瘍(痔瘻)だけです。 痔瘻は肛門周囲膿瘍の治癒後にできるものですが、症状としては、膿などで下着が汚れたり、肛門周囲膿瘍と同様の痛みや腫れが出ることもあります。